世界で広がる電子たばこ禁止の動き、科学的研究に先行

【9月20日 AFP】電子たばこは有効な禁煙手段になるのか、それとも健康を害する新たなものにすぎないのか――。インドが18日、電子たばこの販売の全面禁止を発表するなど、この問題が世界中で議論され始めている。

 だが、このような禁止措置は科学的研究に先行するものだ。電子たばこについて、これまでに分かっていることをまとめた。

電子たばこの含有物

 電子たばこは、液体を過熱させて発生した蒸気を吸引する。この液体には通常、従来のたばこに含まれているニコチンが含まれている。ニコチンは非常に中毒性が高く、複数の研究によると、25歳未満の脳の発達に影響を及ぼし、成人の脳にも有害な影響を与える。

 だが、蒸気として吸った液体には、心血管疾患の要因となる発がん性のタールや一酸化炭素など、普通のたばこに含まれている一部有害物質は含まれていない。

 電子たばこに含まれている微粒子は肺に取り込まれる。米科学アカデミー(NAS)の昨年の報告書によると、「多数の潜在的に有毒な物質」が含まれているという。その中には、ニッケルや鉛といった金属が含まれているが、おそらく液体を過熱するコイルから出たとみられる。

 さらに、農業食品分野では安全とされているが蒸気の状態では肺疾患につながるとされる添加物も含まれている。また、単に電子たばこでの使用についてまったく研究されていない添加物もある。

電子たばこは危険か

 電子たばこが市場に出回ったのは2000年代半ば以降にすぎず、研究者らは健康問題について長期的視点をほとんど持ち合わせていない。

 電子たばこは従来のたばこに比べ毒性が少ないという科学的合意が形成されている。ニコチンは含まれているが、従来のたばこに含まれる発がん性物質を吸引することはない。

 フランスの国立医学アカデミー(National Academy of Medicine)は2015年、「電子たばこの長期的毒性を正確に数値化するのは困難だが、従来のたばこより毒性がかなり低いとの証拠がある」と述べている。

 世界保健機関(WHO)はこれより慎重な立場を取っている。電子たばこは従来のたばこより「おそらく毒性は低い」が、その危険性を数値化するには情報が不十分だとしている。

■禁煙に有効か

 英医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に2月に掲載された英国の研究論文では、電子たばこニコチンパッチ、ニコチンガムなどの製品よりも禁煙に効果があることが示唆された。

 だが、これについてもWHOは、その効果を示す証拠は不十分であり、使用する電子たばこの種類によって効果は異なるとの立場を取っている。

 電子たばこの製造業者らは、反たばこを主張する一部専門家により、製品について「誤った情報」が拡散されていると抗議している。

■若者の使用

 電子たばこをめぐっては、これまでたばこを吸ったことがない若者が、積極的な宣伝と甘いアルコール入り飲料「アルコポップ」のような風味(フレーバー)に引かれて、吸い始めることが大きく懸念されている。研究では、電子たばこが従来のたばこを始めるきっかけになることが分かっている。

 インドは電子たばこ禁止措置の理由として、若者の保護を挙げている。また、米国では高校生の間で電子たばこがはやっており、果物やミント、メンソールの風味が人気だという。

 米ニューヨーク州は17日、ミシガン州に続き風味付き電子たばこの販売を禁止した。米政府は先週、若者の電子たばこの使用を食い止めるため、風味付き電子たばこを近いうちに禁止すると発表した。(c)AFP

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