米電子たばこ大手、フルーツ風味販売中止も総売り上げは変わらず

米電子たばこ大手ジュール・ラブズ(Juul Labs)は2018年、一部フレーバー商品の店舗での販売を中止した。米食品医薬品局(FDA)から、液体を蒸発させて吸引するベーピングの若者の間の使用率を抑えるため、取り組みを一層強化するよう強い圧力を受けたことが理由だった。

しかし米公衆衛生ジャーナル(American Journal of Public Health)に掲載された米国がん協会(ACS)の研究者らによる新たな研究からは、一部のフレーバーが販売されなくなっても売り上げにはほとんど、あるいは全く長期的な影響が出ないことが分かった。ユーザーは他の風味や、甘い風味の販売を続けている他ブランドにすぐに切り替えていたからだ。

ミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニックでニコチン依存センター長を務めるJ・テイラー・ヘイズ医学博士は「ジュールの製品は特に、若者が同社製品を使う様子を見せた宣伝を作っており、多様な風味は戦略の一環だった」と述べた。

ジュールが2018年に店舗で販売を中止したのは、マンゴーやフルーツ盛り合わせ、キュウリやクリームブリュレの風味をつけた電子たばこだ。研究者らは米調査会社ニールセンの販売データを通し、こうした風味の多くがすぐに高い人気を得たことに気づいた。

フルーツ系風味の2017年1月の売り上げは1000万ドル(約11億円)以上だったが、2018年10月にはこれが1億ドル(約110億円)近くまで上昇し、ジュールの売り上げ全体の3分の1近くを占めるようになった。それと同時に、たばこ味の電子たばこの売り上げは全体の40%近くからわずか17%まで落ち込んだ。

たばこ規制を手掛ける非営利団体(NPO)のトゥルース・イニシアチブ(Truth Initiative)で社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるロビン・コーバルは「ACSの研究データからはまた、ジュールの導入が若者の電子たばこの使用パターンに非常に急激な影響を与え、若者の喫煙を過去20年で最高水準まで押し上げた」と述べている。

米疾病対策センター(CDC)の2019年の報告書では、米国の中学・高校生のうち500万人以上が電子たばこを使っていて、その大部分はカートリッジ型であることとフレーバーを主な理由として挙げている。

「2017年11月まで、電子たばこのフレーバーとして最も好まれていたのはたばこ味だった。風味付けされてニコチンが多く含まれる依存性の高い製品が導入されたことで、若者の間でフレーバー製品の使用と消費が大きく伸びた」(コーバル)

ジュールが電子たばこの甘い風味の一部を米国店舗で販売しないことを自主的に決めた2018年11月以降、こうした製品の売り上げは3分の2ほど低下した。それでもメンソールやミント風味の商品の売り上げは倍増し、たばこ風味の製品も人気が大きく伸びている。

ACS経済・健康政策研究プログラムの上級科学者で同研究の主執筆者であるアレックス・リバーは「企業が自主的に制約を課しても、公衆衛生が改善する可能性は低い」と述べている。「ジュールのフルーツ風味製品からの撤退は、ジュールの競合企業によるフルーツ風味製品の売り上げ増加と、特にミントやメンソールなどジュールの他の風味の売り上げ増加の組み合わせによりすぐに相殺された」

同調査以降ベーピング関連の呼吸器疾患により数十人が死亡し、FDAは今年になってからより厳格な指針を課すようになった。ジュールはたばことメンソール風味の電子たばこ以外を全て禁止したが、ベーピングやベーピング製品に関してはいまだに健康に関する深刻な懸念が存在する。

ヘイズは「ベーピングの健康に対する長期的な影響は分かっていない。私は長期的、そして定期的にベーピング製品を使うことで何年もたつと肺が大きく損傷すると思う。それに加え私たちは、ニコチン依存の若者の間で発達途上の脳に影響が出る可能性があると考えている」と述べた。

こうした新たな規制により、若者の間における売り上げが低下したかどうかを研究者が見極められるようになるまでにはまだしばらく時間がかかるだろう。ただ、ジュールが甘めのフレーバー製品を撤退させた後にたばことメンソール風味の製品の売り上げが伸びたことを考えれば、消費者が他の製品やブランドにまたしも切り替えないという保証はない。

コーバルは次のように述べている。

「米国の現在の電子たばこのフレーバーに関する指針は2020年1月に採用され、メンソールなどの若者が引かれる電子たばこのフレーバーを市場に残すような大きく危険な抜け穴がある。この指針は、新たな世代が喫煙者となるよう陥れ、その数を過去20年近くで最多に押し上げた業界そのものを明らかに優遇している」

ジュールのフルーツ風味ポッドはカナダなどの他の国で購入することができるが、米国では今でも他の多くの企業から甘い風味のニコチン含有液を購入できる。ジュール自体は自社ブランドのポッドへの補充を推奨していないが、多くの人がそのやり方を見つけてきたし、ジュールのシステムと互換性があり自分で補充できるポッドを作っている会社は10社以上存在する。

ベーピング製品や企業には今後、どのような規制をかけていくべきだろうか?

「税制だ」とヘイズ。「若者は価格に特に敏感な利用者集団に入っていて、価格が上がればこうした製品の購入が減るだろう。たばこの販売を21歳以上とする法律を支持し、(規制違反をする小売業者に対しては)実施を強化すること」。またヘイズは、ポッドのサイズとニコチン容量を制限することも分別ある選択肢だと提案し、「ニコチンが5%のジュールのポッドは現在、たばこ30~40本以上のニコチンを含んでいる」と補足した。

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