コラム:米国の電子たばこに逆風、英老舗インペリアルにも打撃

[ロンドン 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 英たばこ大手インペリアル・ブランズ(IMB.L)は事業を再び成長させると投資家に約束していたが、成長は火がつく前にしぼんでしまった。米国での電子たばこの取り締まり強化が、英国の老舗企業も窒息させようとしている。

25日に米たばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナル(PM.N)(PM.N)と同業アルトリア・グループ(MO.N)が合併協議を打ち切ると、両社と競合するインペリアルの株主は沸き立った。協議打ち切りの一因は、米当局が電子たばこについて厳しい態度に転じたことだ。特に10代に人気のフレーバー電子たばこのメーカー、ジュール・ラブズの被った打撃は大きかった。アルトリア・グループは同社株式の35%を保有している。

しかしインペリアル自体も米当局の影響は免れない。同社は26日、電子たばこや加熱式たばこを製造する「次世代製品」部門の売上高が9月末までの1年間に50%増加するとの見通しを示した。3月までの半年間に記録した245%増に比べ、著しく減速している。UBSのアナリストによると、同部門の通年売上高は2億8000万ポンドになる見通しで、下期の売上高が前期を下回る計算だ。

電子たばこの吸引が深刻な肺疾患につながるとの疑いから、小売店は電子たばこの発注を止め、消費者も利用に二の足を踏むようになっている。ロイターが先週実施した調査では、米国の成人のうち、電子たばこが紙巻きたばこより健康的だと思わないと答えた割合は63%と、2016年の調査に比べ16%ポイント増えた。

本会計年度の推計売上高が90億ポンドのインペリアルにしてみれば、電子たばこ事業の減速による影響は小さなものだ。ジュールに130億ドル近くも投資したアルトリアと異なり、インペリアルの電子たばこへの投資は小規模にとどまっている。しかし20年までに売上高が最大15億ポンドに達すると見込まれていた次世代製品部門にとって、26日の業績見通し引き下げは挫折と言える。

米食品医薬品局(FDA)は来年5月に電子たばこが健康被害をもたらすかどうかの結論を発表する。これによって電子たばこは失地を回復できる可能性もあるが、インドなど他の国々でも禁止措置は広がっている。インペリアルの打撃は小さいとはいえ、26日に株価が一時10%下落、株式時価総額が19億ポンド吹き飛んだところを見ると、投資家の期待も煙と消えたようだ。

●背景となるニュース

*インペリアル・ブランズは26日、19年度の増収率見通しを従来の「1─4%の上限もしくはそれを超える」から2%に下方修正した。次世代製品部門の業績鈍化が理由。

*1株利益見通しも「4─8%の下限」から「ほぼ横ばい」に下方修正した。

*FDAは150以上の電子たばこ製品とその成分を調査中。犯罪捜査部が電子たばこ製品のサプライチェーンを捜査し、最近急増している吸引に関連する疾患や死亡事例の原因を特定すると表明した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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