EVALI:電子たばこ関連肺傷害のほとんどはTHC含有製品が原因

これは嗜好品としての電子たばこの報告です。禁煙治療の電子たばこと混在しながらトップジャーナルに論文が掲載されていくので、曇りなき眼で読んでいく必要があります。
 EVALIがTHCと強く関連していることは既知の通りです。
 ちなみに、加熱式たばことは関係ありません。医師ですら混同してバッシングしているのを見かけますが、分けて考えるべきです。もちろん、呼吸器内科医としてはどちらも容認しがたいですが。

背景:
 2019年6月から、1000例以上の電子たばこあるいはvapingによる製品使用関連肺傷害(EVALI)がアメリカで報告されている。患者は呼吸困難、咳嗽を呈し、胸部画像検査で両側の肺胞性陰影を伴う低酸素血症を有することが分かった。ほとんどの患者はICUでステロイド治療を要した。全患者はvapingの禁煙、支持ケア、ステロイド治療によって回復し、追跡時には呼吸器症状は消失したままであった。アメリカでは特に若年者の間で電子たばこの使用が急速に増えている。

方法:
 ロチェスター大学医療センター(アメリカ・ニューヨーク州)において、受診30日以内に電子たばこあるいはその他vapingデバイスの使用がある、胸部画像上(CTあるいはX線写真)両側肺胞性陰影がある入院患者を同定した。診療録と患者インタビューから症例の詳細を取得し、症状経緯、身体所見データ、画像所見、検査データ、vapingの喫煙歴、その後の外来追跡時データを含め、過去3ヶ月にわたって調べた。ニューヨーク州保健局と協力して、当院は環境衛生、医学毒物学、感染症、疫学、および慢性疾患予防の専門家からの入力に加えて、州全体の医師のフィードバックに基づく新しい臨床診療アルゴリズムを開発した。

結果:
 2019年6月6日から2019年9月15日までに、当医療センターにおいてEVALI疑いで治療された12症例を報告する。10人(83%)が呼吸困難、発熱、嘔吐を有し、9人(75%)が咳嗽を有していた。11人(92%)がテトラヒドロカンナビノール(THC)含有電子たばこを使用していた。8人(67%)の患者が低酸素性呼吸不全のためICU入室を必要としたが、死者はいなかった。入院期間中央値は7日(IQR7-8日)だった。追跡可能だった6人(50%)は過去のCT所見と肺機能検査に復していた。臨床アルゴリズムは、EVALIの主要徴候と症状があることに加えて、推定診断前に感染症やその他の心肺疾患を除外することが重要としている。

結論:
 われわれのコホートではEVALI疑い患者は、致死的な低酸素血症を有しており、67%がICUマネジメントを要した。重篤な症状であるにもかかわらず、過去のEVALIの報告と同様に、ほとんどの患者はvapingの禁煙と必要時全身性ステロイド治療をおこなうことで症状発現後1~2週間以内に病態が改善した。EVALIを疑われた患者のほとんど(92%)はTHC含有製品を使用しており、THCを含んだe-リキッドまたはオイルがEVALIの病因に関する全国的調査の焦点となっている。潜在的な毒性、基礎となる病態生理学的メカニズム、およびEVALIによる入院リスクが高い感受性のある個人を特定するために、さらなる研究が必要である。今回EVALIの評価と管理のための世界初の臨床診療アルゴリズムを提示した。


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