米アルトリア、電子たばこ出資で9400億円の評価損

【ニューヨーク=大島有美子】米たばこ大手アルトリア・グループは30日、保有する電子たばこメーカー、ジュール・ラブズ株式の評価額を見直し、2019年通期で86億ドル(約9400億円)の評価損を計上したと発表した。米国の一部の州が、リスクの説明が不十分だったなどの理由でジュールを提訴しており、想定した収益が見込めないと判断した。

19年10~12月期に41億ドルの評価損を計上した。7~9月期にも45億ドルを計上しており、積み増した形だ。同日発表したアルトリアの決算は、10~12月期の最終損益が18億ドルの赤字、19年通年では12億ドルの赤字(18年は69億ドルの黒字)だった。

電子たばこは専用カートリッジ内の液体を電気で熱して霧状にして吸う製品だ。果実風味を加えるなど「吸いやすさ」を売りにしたことで未成年者に流行し、米国で社会問題になっている。電子たばこ使用との関連が疑われる肺疾患患者の報告も急増。紙巻きたばこに比べて規制も緩いため、自治体が独自に販売規制を導入し始めているほか、米政府も規制を強化する方針を打ち出している。

ジュールは近年、電子たばこ製品の販売拡大で急成長してきた。アルトリアは18年12月、ジュール株の35%を128億ドルで取得した。当時のアルトリアの株式取得価格から算出したジュールの企業価値は380億ドルと見積もられていた。今回の見直しから算定すると、ジュールの企業価値は株式取得時から約7割減少する。アルトリアは自社の経営幹部だった人物をジュールのトップに据え、広告の廃止や人員削減など事業の建て直しを進めている。

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